「大海原」1978年(2m以上)安田火災美術財団奨励賞受賞
 女性2人の像だが、1本の丸太から彫り起こした。
足りない部分は 継ぎ足して彫った。
藝大の木彫室にはボタン一つで上下左右、東西南北に。
1人でも彫る事が出来た。大学を出てからは自力で持てる範囲内の像しか彫れなくなった。
この「大海原」はあのクレーンのお陰で彫る事が出来た最後の大きな木像である。
クレーンを使う時は緊張した。ベルトの掛け方がまずいと、丸太が滑って大怪我にもなりかねない。
スイッチ操作も慎重にやらないとクレーンが振り子のように振れて危なかった。
荒彫りの段階では大型のチエンソーも使ったから、けっこう危険と隣り合わせの作業だった。
チエンソーが硬い節の部分にあたり、その反動で跳ね返ってくるとチエンソーの刃が体に当たり怪我する話などよく聞かされた。
ますます緊張した。
その大型チエンソーだが、電動カンナ・電動ノコギリなどと共に引っ越しの際に彫刻仲間にあげてきた。
細々と続けていた木彫だったが、引っ越したら場所もないし彫れなくなるだろうと思ったからだ。
ところが、今私はかなり広いアトリエでこれを書いている。
自分の人生、自分で「ところ天人生」と名づけて来たが、まさしく「ところ天人生」・・・・・・・・
出会いによつて千変万化。
何が起こるか分からない。
又、少しづつ小品の木彫を彫っている。
道具は「ノコギリとノミと万力」だけである。

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